『法苑珠林 』(ほうおんじゅりん)は、唐代 に道世 が著した仏教典籍、類書 。全100巻。668年 (総章 元年)成立。
659年 (顕慶 4年)、唐道世は『経律異相 』に依拠し『諸経要集 』を編纂、その後更に『法苑珠林』を撰文している。引用する典籍は仏教のみならず儒家、道教、讖緯、雜著など400種を超え、また現在は散逸した『仏本行経 』、『菩薩本行経 』、『観仏三昧経 』、『西域誌』、『中天竺行記 』などを引用し、インドの歴史地理研究の上で重要な史料となっている。
内容は劫量篇より傳記篇までの全100篇668部となっており、文体は駢文 が採用されている。
本書は、前掲の南朝 梁 宝唱 の『経律異相』50巻や、虞孝敬 の『内典博要』30巻(亡佚)という先立つ仏教類書に続き、本書を撰した。ただ、先学の編撰したものと大きく異なるのは、当時の中国で人口に膾炙していたり、文献に残されていた仏教説話を盛んに取り入れて、経文類に著された観念の具体的な表れとして用いた点にある。具体的には、本書の各篇の構成は、「述意部」(駢文)・「引証部」(経文)という概要と経文の引用があり、その後に、「感応縁」という部分が来るというものである。この「感応縁」が具体的な仏教説話に相当する[ 1] 。
篇目
却量篇第一(巻1)
三界篇第二(巻2-3)
日月篇第三(巻4)
六道篇第四(巻5-7、感応縁50縁)
千佛篇第五(巻8-12、感応縁12縁)
敬佛篇第六(巻13-17、感応縁91縁)
敬法篇第七(巻17-18、感応縁41縁)
敬僧篇第八(巻19、感応縁11縁)
致敬篇第九(巻20、感応縁1縁)
福田篇第十(巻21)
歸信篇第十一(同上、感応縁3縁)
士女篇第十二(同上)
入道篇第十三(巻22、感応縁5縁)
慚愧篇第十四(巻23)
獎道篇第十五(同上、感応縁3縁)
説聽篇第十六(巻23-24、感応縁9縁)
見解篇第十七(巻25、感応縁2縁)
宿命篇第十八(巻26、感応縁9縁)
至誠篇第十九(巻27、感応縁14縁)
神異篇第二十(巻28、感応縁18縁)
感通篇第二十一(巻29)
住持篇第二十二(巻30)
潛遁篇第二十三(巻31、感応縁13縁)
妖怪篇第二十四(同上、感応縁27縁)
變化篇第二十五(巻32、感応縁25縁)
眠夢篇第二十六(同上、感応縁6縁)
興福篇第二十七(巻33、感応縁11縁)
攝念篇第二十八(巻34)
發願篇第二十九(同上)
法服篇第三十(巻35、感応縁5縁)
燃燈篇第三十一(同上、感応縁3縁)
懸旛篇第三十二(巻36、感応縁1縁)
華香篇第三十三(同上、感応縁6縁)
唄讚篇第三十四(同上、感応縁6縁)
敬塔篇第三十五(巻37-38、感応縁21縁以上)
伽藍篇第三十六(巻39、感応縁20縁以上)
舎利篇第三十七(巻40、感応縁18縁)
供養篇第三十八(巻41)
受請篇第三十九(巻41-42、感応縁6縁)
輪王篇第四十(巻43)
君臣篇第四十一(巻44、感応縁5縁)
納諌篇第四十二(巻45)
審察篇第四十三(同上、感応縁3縁以上)
思慎篇第四十四(巻46、感応縁11縁)
儉約篇第四十五(同上、感応縁2縁)
懲過篇第四十六(巻47、感応縁3縁)
和順篇第四十七(同上)
誠勗篇第四十八(巻48、感応縁4縁)
忠孝篇第四十九(巻49、感応縁15縁)
不孝篇第五十(同上、感応縁3縁)
報恩篇第五十一(巻50、感応縁4縁)
背恩篇第五十二(同上)
善友篇第五十三(巻51)
惡友篇第五十四(同上)
擇交篇第五十五(同上、感応縁3縁)
眷屬篇第五十六(巻52、感応縁7縁)
校量篇第五十七(同上)
機辨篇第五十八(巻53、感応縁4縁)
愚戇篇第五十九(同上)
詐偽篇第六十(巻54)
惰慢篇第六十一(同上、感応縁8縁以上)
破邪篇第六十二(巻55、感応縁6縁)
富貴篇第六十三(巻56、感応縁6縁)
貧賤篇第六十四(同上、感応縁1縁)
債負篇第六十五(巻57、感応縁11縁)
諍訟篇第六十六(同上、感応縁2縁)
謀謗篇第六十七(巻58-59)
呪術篇第六十八(巻60-61、感応縁8縁以上)
祭祀篇第六十九(巻62、感応縁13縁)
占相篇第七十(同上、感応縁6縁)
祈雨篇第七十一(巻63、感応縁23縁)
園果篇第七十二(同上、感応縁12縁)
漁獵篇第七十三(巻64、感応縁14縁)
慈悲篇第七十四(同上、感応縁5縁)
放生篇第七十五(巻65、感応縁1縁)
救厄篇第七十六(同上、感応縁15縁)
怨苦篇第七十七(巻66-67、感応縁13縁)
業因篇第七十八(巻68)
受報篇第七十九(巻69-70、感応縁26縁)
罪福篇第八十(巻71、感応縁1縁)
欲蓋篇第八十一(同上)
四生篇第八十二(巻72、感応縁2縁)
十使篇第八十三(同上)
十惡篇第八十四(巻73-79、感応縁70縁)
六度篇第八十五(巻80-85、感応縁21縁)
懺悔篇第八十六(巻86、感応縁3縁)
受戒篇第八十七(巻87-89、感応縁10縁)
破戒篇第八十八(巻90、感応縁4縁)
受齋篇第八十九(巻91、感応縁4縁)
破齋篇第九十(同上、感応縁3縁)
賞罰篇第九十一(同上、感応縁13縁)
利害篇第九十二(巻92、感応縁1縁)
酒肉篇第九十三(巻93-94、感応縁14縁)
穢濁篇第九十四(巻94、感応縁3縁)
病苦篇第九十五(巻95、感応縁14縁)
捨身篇第九十六(巻96、感応縁9縁)
送終篇第九十七(巻97、感応縁19縁)
法滅篇第九十八(巻98)
雜要篇第九十九(巻99)
傳記篇第百(巻100、感応縁3縁)
脚注・出典
^ 荒牧典俊・小南一郎訳『出三蔵記集 法苑珠林』解説、pp299-310
参考文献
小南一郎 訳『出三蔵記集 法苑珠林』(「大乗仏典 中国・日本篇」3、中央公論社、1993年 )- 抄訳(底本は高麗版大蔵経本)で、前者は荒牧典俊 訳。
周叔迦・蘇晋仁校注『中国佛教典籍選刊 法苑珠林校注』(中華書局、2003年)